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第304話 王の退陣②

作者: 花柳響
last update 公開日: 2026-03-30 06:01:37

 彼はゆっくりとした足取りで私へと歩み寄り、冷え切っていた私の両手を、自分の大きな手でふわりと包み込んだ。

 彼の指先は、数時間前のような氷のような冷たさを失い、確かな人間の体温を取り戻している。

「……顔色、少し良くなったみたい」

 私が安堵の息を吐き出しながら言うと、湊は微かに口角を上げ、私の手の甲を親指で優しく撫でた。

「ああ。随分と長い時間、暗闇の中で迷子になっていた気がするけれど。ようやく、出口の光が見えたよ」

 その言葉の響きに、私はほんの少しだけ胸の奥がざわつくのを感じた。

 出口の光。

 それは、龍一郎さんたちを出し抜き、九龍の次期当主の座を死守するための、起死回生の策を見つけたということなのだろうか。

 しかし、彼の纏う空気は、これから血みどろの権力闘争に身を投じる『修羅』のそれとは、あまりにもかけ離れていた。

「湊、どんな結論を出したの?」

 私が真っ直ぐに見つめると、湊は私の手を包み込んだまま、ゆっくりと深く息を吸い込んだ。

 そして、静かな、しかし
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